うつわの基本を知ろう
「作家のうつわ」は敷居が高いと感じている方が多いと話される「UTSUWA KESHIKI(うつわけしき)」の店主、安野久美子さん。安野さんご自身も昔はそう思っていたと言います。作家のうつわを買うときに、知っておくと便利なうつわの基本について、安野さんに教えていただきました。
料理のボリュームに合わせたサイズ選び
作家のお皿を選ぶときに迷うのがサイズかもしれません。お皿の大きさは寸で表します。1寸は約3センチです。
「お皿の大きさは、どういった用途で使うかによって選びます。一枚のお皿におかずもご飯も全部のせるようなワンプレートで使う場合は、8寸、24センチくらいあると使いやすいとされています。おかずだけをのせる場合は、6寸か7寸くらい。取り皿で使う場合は、5寸か6寸くらいがおすすめ。
たとえば、家族で食卓を囲む際、大皿におかずを盛りつける場合は、取り皿だけでなく、少し深さのある4寸か5寸くらいの中鉢や小鉢があると便利です」と安野さん。
オンラインで購入される場合は、サイズ感を写真で確認
安野さんのインスタグラムを拝見すると、料理を盛りつけた写真がたくさん登場します。なぜなら、実際に料理を盛りつけてみないと、うつわのサイズ感がわからないから。
「実際に盛ることで、このお皿にはどのくらい乗るのか、こんな料理を乗せたらいいのか、参考になればと思っています。たとえば、豆皿だけが写真に写っていたら、大きいのか小さいのかわかりませんよね。来店が難しい方もいらっしゃるので、手に取れなくてもイメージしやすい工夫をしています」。
オンラインショップの場合は、料理が盛りつけられた写真などを見て、サイズ感を確認してから購入されることをおすすめします。
陶器、磁器、漆器、木工、ガラス・・・それぞれの特性を知る
うつわの素材にも様々あります。陶器、磁器、半磁器、漆器、木工、ガラスなど、それぞれに特性があり、質感も違うので、特徴を知って選びたいですね。
陶器
自然に採れる土(粘土)が原料。土のぬくもりが感じられる素朴な風合いのものが多い。水を吸いやすいのでシミになることもありますが、それを楽しむ使い方もあります。
磁器
陶石と呼ばれる岩石が主な原料。ガラスのように滑らかで、薄手で軽いうつわ。水を吸いにくく、色やにおいがしみこまないメリットがあります。
半磁器
土と石を合わせた原料でつくられます。陶器の温かみのある風合いと磁器の強さを兼ね備えています。電子レンジや食器洗い乾燥機でも使えるものもあります。
漆器
漆(うるし)から採れる樹液を加工し、木地に塗り重ねたもの。熱が伝わりにくく冷めにくい、水を吸いにくい、色やにおいがしみこまない、軽くて丈夫などの特徴があります。防腐性、抗菌性に優れています。
木工
木材を彫ってつくったもの。木の種類で風合いや堅さなどが変わります。軽く、熱が伝わりにくく、天然素材のぬくもりを感じられます。水を吸いやすく、においがしみこみやすい点には注意が必要です。
ガラス
珪砂(けいさ)と草木を燃やしてできるソーダ灰に石灰を組み合わせ、高温で溶かして形をつくります。極端な熱の変化に弱く、割れやすい性質があります。水を吸いにくく、色やにおいが染み込まないので、扱いやすい素材です。
素材によって扱い方が異なるので、メンテナンスの方法も確認して購入されるといいですね。
食卓をにぎやかにするうつわのカタチ
一口にお皿と言っても形によって雰囲気が異なります。色々な形のお皿が食卓に並ぶだけで華やかになります。特にオーバル(長円形)は、うつわ初心者におすすめです。カレーにパスタ、サラダなど、どんな料理でもカバーできる優れもの。ワンプレートの盛りつけも上手にできます。丸いお皿と違って場所を取らない点でも便利です。
その他、花の花弁を模した「輪花」や、花びらの先が尖った「稜花(りょうか)」、六角形や八角形のものなど様々な形があります。
メンテナンス方法を知って長く使おう
陶器や土鍋など、吸水性の高いうつわは、まず最初に「目止め」を行います。
「目止め」とは、うつわに汁気や油が染み込むことを防ぐため、米のとぎ汁などで表面をコーティングすること。
鍋に目止めをするうつわを入れ、そこに米のとぎ汁をうつわがかぶるまで入れて煮沸します(土鍋などの大きなものは、土鍋自体に米のとぎ汁を8分目くらいまで入れて煮沸)。沸騰したら火を止めて熱を冷まし、最後に洗い流します。
「注意点は、目止めをするための鍋が汚れているとその汚れがうつわに移ってしまうこと。作家さんによってはすでに目止めをされている場合があるので、購入時には確認してから買うといいですよ」。
毎日のお手入れは、しっかり乾かしてから収納します。湿気が残ったままだとカビが生えることがあるので注意が必要です。食器洗い乾燥機は、作家のうつわのほとんどは使えません。正しくメンテナンスしながら長く大切に使いたいですね。
次回は、うつわを楽しむポイントについてご紹介します。
手仕事によるうつわと食の道具を取り扱うギャラリー「UTSUWA KESHIKI」店主。モデル活動を経てデザイン事務所に勤務、グラフィック/エディトリアルデザインを手掛ける。2018年5月「UTSUWA KESHIKI」を東京・赤坂にオープン。2020年に「うつわ使いがもっと楽しくなる本。」を出版。
https://www.utsuwa-keshiki.net/