ファイナンシャルプランナーに聞く「住宅ローン②」 変動?長期固定?今はどっちを選ぶべき?
住宅ローンを借りるときに一番頭を悩ませる「金利タイプ」。住宅ローンには大きく分けて「長期固定金利」と「変動金利」2つのタイプがありますが、超低金利時代の今、金利タイプはどのように考えればいいのでしょうか?ファイナンシャルプランナーの小田慎治郎さんに聞きました。
住宅ローンの金利タイプは「変動」と「長期固定」の2つ
金利の基礎知識として知っておきたいのは、「変動金利」と「長期固定金利」の2つのタイプがあること。
「変動金利」タイプは、金融情勢の変化に伴って返済中に借入金利が変わります。
「長期固定金利」タイプは、借入金利が全期間を通して変わりません。
現在の金利は、「長期固定金利」より、「変動金利」の方が低くなっているので、数字だけを見ると「変動金利がおトク!」と思うかもしれませんが、実際は借りた後の金利の動向でおトクになるかが決まります。
金利は経済状況により変動します。変動金利は、借り入れ後に市場金利が低下すると返済額が減少し、上昇すると返済額が増加することもあります。
「長期固定金利」は、借り入れしたときの金利はずっと変わらないので、長期的な計画を立てることができます。ただ、借り入れ後に金利が低下しても返済額は下がりません。
「変動金利」と「長期固定金利」どちらを選ぶ?
では、今の経済状況では、どちらのタイプを選ぶのがいいのでしょうか?ファイナンシャルプランナーの小田慎治郎氏に話を聞きました。
「住宅ローンの金利は、ここ十数年低い状況で推移しています。金利が今、これだけ低いということは、いつかは上がるということ。いつか上がるとわかっているのであれば、長期固定にした方が安心を買う意味でもいいと思います」。
「今から13年前、私が住宅ローンを組んだ時の長期固定金利は2.8%。2005~2006年の長期固定金利は、2%半ば~4%半ばでした(※1)。現在は、長期固定金利でも1.2~1.9%くらい(※2)。一方、現在の変動金利は0.5%くらいなので、長期固定金利と比べると変動金利の方がおトクに思えますが、長期固定金利の1.9%でも十数年前に比べるとかなり低い金利になっています」。
「もちろん変動金利の0.5%が長い間続くのであれば、おトクになりますが、先々の金利の動向については、20年30年後のことは金融のプロでもわかりません。変動の方がおトクなのか固定の方がおトクなのか、結果は終わってみないとわからないということです。急に金利が上がった時に対応できるかを考えて選んでほしいのです。」
※1 フラット35の借り入れ金利の推移の資料(住宅金融支援機構)
※2 2019年4月1日現在のフラット35の金利
低い金利で借りられた分を貯蓄。金利の上昇に備える
「どうしても変動金利がいい!という方は、長期固定金利より、金利が低く組めた分を貯蓄しておき、金利が上昇したときに返せる準備をしておくと安心」と小田さん。
「初めから変動金利を選ぶのではなく、10年や15年固定金利タイプを選ぶという方法もあります。その間にお金を貯めておき、固定期間終了後、金利が上がるタイミングで繰り上げ返済をするなど、先のことまで考えて選びたいですね。ポイントは、お子さんがいる場合、住宅ローンを払いながら、教育資金を同時に払えるのか。その時金利が上がっても返せるのかなど、先々のライフプランを考えて住宅ローンの金利タイプを考えて欲しいと思います」。
繰り上げ返済のタイミングは?
住宅ローンは、定年までに完済できるようにする方がいいのでしょうか?
小田さんは、「定年のタイミングで、退職金を使って繰り上げ返済をする方もおられますが、退職金は老後資金に置いておくことをおすすめします。退職時に住宅ローンがどれだけ残っているかを知っておき、その時に向けて事前にお金を貯めておくべきです。」とアドバイス。
10年や15年固定金利などを選んだ人で、早めに繰り上げ返済をしたいと考えている場合は、住宅ローン減税を最大限利用した後にしましょう。消費税率10%引き上げ後に住宅を購入し、ローンを組んだ方は、住宅ローン減税が3年間延長され、13年間所得税の控除を受けられます。繰り上げ返済をするなら、節税効果の高い住宅ローン減税の控除期間が終わった後がおすすめです。
35年などの長期固定金利タイプを選んでいる人は、金利は変わりませんし、繰り上げ返済を急ぐ必要はないと思います。
今は、貯金しても金利はほとんど付きませんが、反対に住宅ローンなど、お金を借りる場合にはおトクという考え方もできます。
金利のことを知って、自分にとって適切な方法で住宅ローンを借りたいですね。
ファイナンシャルプランナー。大学卒業後、上場企業でコンサルティング営業に従事しFPに転身。現在、年間20本以上の貯蓄や保険に関するマネーセミナーや個人・法人の資産運用、住宅ローン、相続対策などのコンサルティング実績を持つ。個々の人生設計に合わせたプランを一緒に考えながらコンサルティングをするスタイルが人気。MDRT成績資格会員。ハートリンクコンサルティング株式会社所属。